7/5(後)

 目が覚めました。意識はぼんやりしていましたが、やっと終わったようだとわかりました。ここで呼名応答や掌握、足趾動の確認をしながら意識の回復を判断するそうです。そう言われてみれば確かに手を握ってみてとか足を動かしてみてとか言われたような記憶がありますがほとんど覚えていません。意識の確認が取れたら手術室から運び出されます。枕元で母親が泣いていた記憶があります。ようやく手術が終わりました。ここまでは先生方が頑張ったので、次は私が頑張る番になります。

 

 目が覚めてくるとだんだん自分の置かれている状況が分かってきます。噛み合わせが変わったようですがまだ顎の感覚が鈍く、舌で触った感じでは今までとの違いは感じられません。上下の歯は固定されていて、少しも動かすことができません。口の中からはチューブが2本出ています。直接傷口に入っているようです。ドレーン*1といってこれが血を吸っているらしく、おかげで唾液に血が混ざることはほとんどありませんでした。左の鼻の穴からもチューブか出ていて、これは胃まで入っています。今後1週間以上は口が開かないのでここから栄養を摂取するために挿入されているらしく、確かに唾を飲むと喉元にチューブの感覚があります。口には酸素マスクがかぶせられています。酸素のおかげで呼吸が楽になるのでしょう。効果はあったと思いますが恩恵を実感することはなかったです。胸には心電図が張り付いていて、枕元の機械が心音を刻んでいました。右手の指にはパルスオキシメーターがついていて、血中の酸素の状態を見てくれているそうです。下半身には尿道カテーテルが入っていました。直接膀胱まで入っているのでトイレに行く必要がありません。それでも心なしか尿意を感じますが気のせいのはずです。点滴も刺さっているので体中チューブまみれです。

 

 手術室を出たのは18時くらいのことだったそうです。ここから最初の夜を迎えますがここが山場です。全然眠くならない、痛みは引かない、身体は思うように動かない。痛みは座薬で何とかなりましたが息苦しさはどうしても改善できません。それもそのはず、口は固定され、いたるところにチューブがくっついているわけですから。高校生の時には麻酔の覚醒後に寝返りをして吐いた経験があるので絶対に寝返りはしないようにしていました。ここで地味につらいのが血栓防止用のストッキングです。きついのでだんだん痛くなってきますが、口が開かないのでそれを伝えることができません。後日外してみたら痣と水膨れだらけになっていました。音楽を聴いて無理やり心を宥めつつ、最初の夜は過ぎていきました。念のためにナースコールを握りしめていましたが意思の疎通ができない以上、無意味だったかもしれません。

 

*1:ドレーン…体内に貯留した消化液、膿、血液や浸出液などを体外に排出するためのチューブ。創傷部に直接挿入することで創傷部の浸出液や血液がドレーンの中を通って、排液バッグの中に貯留される。