7/19

 今日で退院です。2週間でしたが案外早かったような気もします。思えばいろいろなことがありました。手術におびえ、チューブに苦しみ、流動食に喜び、同室の患者に殺意を抱き、引っ越しを経て退院へとたどり着きました。食事はいまだに全粥なので、退院後も柔らかいものを食べつつ、少しずつ歯ごたえのあるものに挑戦していく形になります。開口練習も必要であると言われました。測ったところ、開口は2cmでした。これを4.5cmくらいまでは開けたいとのことなのでなかなか長い道のりになりそうです。これからも額固定のゴムはつけていた方がいいとのことなのでしばらくは口を閉じて生活することになるでしょう。

 

荷物をまとめて病棟を出ます。病棟のドアは、出るときにはそのまま出られますが、入るときにはICカードが必要になるタイプのものです。ICカードは既に回収されたので、つまりここを出たらもう戻れないということです。べつに戻りたいなんて思わないですが、少し寂しいような気もします。ふと振り返るとちょうどドアが閉まるところでした。本当にお別れです。

 

 外に出ると、夏の湿った空気が私を包みました。久しぶりの感覚です。これがシャバの空気か。容赦ない日差しがアスファルトを焼いています。私はこの季節のなかで生きていけるでしょうか。ふと見上げると先ほどまで私のいた病室が見えました。もう二度と入ることはないでしょう。とはいえ外来にはまだまだこれからも通う予定です。歯科矯正に至っては年単位で続きます。数週間後にはまた戻ってくることになりますが、ひとまずはさようならです。まだまだ本調子ではないですが、キャリーケースを引いて歩き出しました。