7/15-7/18

 人生でもそうそうない機会に遭遇しました。病棟の引っ越しです。病状が良くなったのでお部屋の引っ越し、ではありません。病院全体が新棟に引っ越すのです。ついにこの古い建物を抜けて真新しい病棟へ行きます。すでに隣には立派で綺麗でモダンな建物が完成しています。幸いにも私は歩けるようになっているので看護師さんの付き添いのもと、徒歩で隣の病棟へ向かいます。ここ数日は引っ越しの準備で職員さんはいつも忙しそうでした。患者もどことなく落ち着きません。ですが新棟への期待も大きいです。もうこんな古い病院は嫌だ!

 

 歩いていくといっても、即席の連絡通路ですぐです。外に出た時間はごくわずかでした。初めての建物の中を職員の先導のもと進んでいきます。帰れるのか心配になってきます。案内された病室は最上階の8階でした。今までが4階だったので見える景色が全然違います。最寄りの駅はもちろん、その向こうの知らない街まで一望できます。しかも室内が本当にきれいです。新品の部屋とベッドで一番先に寝るのが私であるという事実が誇らしい。しかも4人部屋に私一人でした。流し台もトイレも貸切です。なんという贅沢でしょう。今回はいろいろ頑張ったので報われたようでした。

 

 ただ、綺麗すぎてなんとなく居心地が悪い気がします。廊下に出るだけで緊張します。もしかしたらあのぼろい病棟も心のどこかでは気に入っていたのかもしれないですね。とはいえそんなことを考えていても仕方ないので新棟をエンジョイしようと思います。

 

 今までの病棟は、誰でも入ることができました。面会をするためにはナースステーションで用紙の記入が必要であるとはいえ、その気になればしれっと潜入できたと思います。ですがこの病棟ではそうもいかないようです。患者にはICカードが貸し出され、病棟入口でかざす必要があります。面会者も同じで、受付で渡されるICカードをかざして入る形になります。インターホンすらないので患者といえども忘れたら締め出されます。大丈夫かこれ。

 

 

7/18

 

 営業日初日、新棟の外来に呼ばれました。いままでは古参顔して外来患者を威圧していた私ですが新棟ともなると私とて新参です。おっかなびっくり、案内図を確認しながら向かいました。診察室の雰囲気もガラッと変わっていて、個室になっています。以前はカーテンの仕切りのみだったので両隣で親知らずをギュルギュル削る音を聞きながらの診察だったわけですが、そこは改善されたようです。とても良いことだとは思いますが歯科の診察室ってどうあれ怖いですよね。これからこの場所で何百何千の抜歯や小手術が行われると考えると怨念の一つも宿りそうなものです。よくよく見れば診察台をはじめとして、多くの設備は旧棟から持ってきたもののようでした。引っ越しの苦労が目に浮かびますが患者の感知するところではないです。ひととおりの診察を終えた後、明日での退院を言い渡されました。宣告がやや急ですが、おおむね予定通りといったところです。良くも悪くも、この生活の終わりが見えてきました。